追突しないための体験型指導方法
③(発進追突の事故報告書内容から見る防止対策等)
3 発進追突の事故報告書内容から見る防止対策
右のグラフは、下記に掲載しております「発進時追突の交通事故発生報告書内容」を基に作成した事故原因グラフです。
グラフを見ると、ほとんどが脇見等で前車の動きを見ていません。このことは、先に説明しました「追突しないための体験型指導方法」
①(基礎編 空走時間体験等)
②(実技編 停止距離体験、停車時相手に威圧を与えない車間距離等)
の内容を理解していれば追突事故の発生を減少させることができると思います。
しかし、それだけでは十分と言えません。
私どもが行う事故惹起者の実技講習の受講者を見ていますと、
※ 車間距離が狭い
※ 信号待ちや渋滞時の停車時、右の写真のように
チェンジをDレンジに入れたままブレーキを踏んだ状態
で、信号が変わって発進するまで同じ状態です。
~ 渋滞等で時間が長くなっても同じなのです。
では、どのような指導や対策があるでしょうか?
指導・対策は後で説明しますので、まず、下記の「発進時追突の交通事故発生報告書内容」を読んでみてください。
どのような防止策また指導方法がありますか?
関連項目
≫ 交通事故対策に悩んだら「原点回帰」の体験型講習を!(交通事故形態に対応する事故原因と指導の考え方) ≫追突しないための体験型指導方法①(基礎編 ツール・アプリを使った空走時間体験等) ≫ 運転中の「ながらスマホ」に対する指導方法~ スマホ運転の危険性を認識させる指導方法 ~ new ≫ 交通事故発生報告書の記載例(安全運転指導の一つとして記載させましょう。) |
▼発進時追突の交通事故発生報告書内容(21事例)
当教習所が提供しております「交通事故分析ツール」使って「事故形態概要」より抽出したものです。
≫渋滞中、隣の車が動き出したのを見て、進んだのと勘違いをして前方車輌に追突
≫渋滞中、脇見をしていて追突してしまった。
≫信号が青になり発進したが、前方に居たバイクが右折する為停止しているのに気付かず接触
≫停車中にブレーキを踏むのが甘くなり追突
≫信号待ちをしていた所、眠気でブレーキペダルから足がはずれ前方で信号待ちをしていた車両に追突した。
≫赤信号で停車し、信号が変わったために発進したが前方の店舗に目をとられ前車の停止に気が付かず衝突
≫渋滞中の交差点にて信号が青に変わり進行したが前車が進行しなかったため追突した。
≫交差点で青信号で発進した時、前方の車(相手方)の停止に気付づくのが遅れて追突した。
≫信号が青に変わり発進したところ、バックレンジに入っていたため後退し、後方車両に衝突
≫赤信号で停車し、信号が青に変わり見切り発進をしたため前車に衝突した。
≫交差点右折車線で信号待ちをしていた時に前方不注意で前車が発進したと思い発進したところ衝突。
≫国道を進行中、赤信号の為停車。一旦車は停まったがブレーキのふみがあまく、前進してしまい前の車両に接触した。
≫信号待ちの際、ブレーキの踏み込みが甘く、自車が動き出した。直ぐに気付いてブレーキを踏んだが間に合わず前車に衝突
≫赤信号で停車中にブレーキを踏んでいた足が滑り、アクセルを踏んだため前車へ衝突した。
≫交差点での信号待ち、先頭車両ばかり見ており、自車前方車両の確認が甘かった。
≫赤信号で停車中に鞄の中身を確認していたところ、前車が発進したと勘違いし衝突した。
≫赤信号で停車中に地図を見ていたために前の車が発車したと勘違いし衝突した。
≫赤信号待ちで停車中に足元の書類を拾っており、周りの車が動き出し見切り発進したために停車中前車へ衝突。
≫信号待ちをした際に車内で書類を見ていて、ブレーキを踏んでいたがふみがあまく車が前進し、あわててブレーキを踏んだつもりがアクセルを踏んでしまい前方の車輌にぶっかった。
≫信号待ちの先方車両に追突。停止している状態から前の車両が動いた為アクセルを踏んだ時に一瞬寝てしまい当たる直前で目が覚めブレーキを踏んだが間に合わず追突してしまった。
≫信号待ちをしていた所、眠気でブレーキペダルから足がはずれ前方で信号待ちをしていた車両に追突した。
★参考動画
上記内容に類似した動画が、YouTubeにありますので、右のボタンをクリックして参考にしてください。(リアーカメラの映像)
■発進追突の防止の指導方法
まず、「追突しないための体験型指導方法」
①(基礎編 空走時間体験等)
②(実技編 停止距離体験、停車時相手に威圧感を与えない車間距離等)
の指導を行ったうえで、下記の運転操作・行為を徹底させれば大半の発進追突を防止できるのではないでしょうか?
発生報告書の内容を読むと、“ 前車を見ていない ” “ 慌てる ” “ 誤操作 ” 等がありますので、業務運転で信号待ちや渋滞時には、
1【 前車に威圧感を与えない車間距離をとる。】
(「追突しないための体験型指導方法」②を参照してください。)
2【 停車したら、チェンジをNレンジに入れる。】
3【発進時、余裕のある発進】
を指導し習慣づけることが必要です。
この項での指導内容は、上記、1,2,3及び
4【同乗指導方法】
5【ドライブレコーダ(DR)映像による車間距離指導】
となっております。
チェンジをNしてブレーキを踏んでますか?
サンプル動画 信号待ちでの日報作成
■重点指導対象者
≫過去に追突事故がある者
≫運転記録証明書の違反記録に「携帯電話の使用違反」歴がある者
≫同乗時に、携帯電話やメール見ていたことがあった者
≫停車中に日報等書類を作成するする者
≫新規顧客訪問が多い者
には必ず指導してください。
■ 同乗指導が効果的です。
ドライバーの長年染みついた癖や動作は「言葉による指導」だけではなかなか抜けきれません。
同乗指導した場合、信号待ちは頻繁に機会がありますので、その都度、下記の操作をさせて体に覚えこませる必要があります。また、同乗指導した場合は、ドライバーの「反応時間」「威圧感を与えない車間距離」「適正車間距離」等を質問して意識づけを図ってください。
■管理者、指導者が同乗指導できない場合は、「安全運転管理支援チーム」にお任せください。
私どもが行う実技講習の「追突事故防止コース」では、先の「基礎編」「実技編」をしたのち、路上講習で繰り返し上記1及び2の実践と、下記写真のように走行速度と車間距離計の実測車間距離を伝えますので、速度と車間距離感覚が体感できる講習となっております。
指導方法
1 前車に威圧感を与えない車間距離をとる。(追突しないための体験型指導方法②再掲 詳細省略)
運転席から見て、前車のタイヤが見える地点から少し手前で停車する。
これは、
≫ 前車を死角から見える範囲に置く
(良好な視野の確保と心のゆとりを持たせる。)
≫ とっさ時に追突を軽減する距離を稼ぐ
為です。
※「5m前後の車間距離を空けると割り込まれる。」との反論があった場合は、
≫「入れてあげなさい。あなたも、どうしても車線変更しなくてはならない場合があるでしょう。お互い様です。余裕のある運転をしましょう。」と指導してください。
2 停車時のチェンジ等操作
停車したら、チェンジをNレンジに入れる。
これは発進時、
■誤発進操作の軽減
■発進時のチェンジ操作にかかる時間を得る
ためです。
この操作に慣れてくるとドライバーは、
■「余裕のある発進」ができるようになり、
■前車との車間距離が広がることで、良好な視野が確保でき前車の急な動きに安全な対応できるようになります。
信号で停止した場合や渋滞時チェンジをN(ニュートラル)にしてブレーキを踏む。
※ 停車時、チェンジをNにする操作は長年の癖が身についていますので、同乗指導で頻繁に操作させる必要があります。
事例を教訓に指導する
平成28年2月25日大阪・阪急梅田駅前のスクランブル交差点で、運転中に突発性の病気を発症し自動車が暴走、歩行者をはねた交通事故がありました。
この事故ついて私どもが注目するのは、防犯カメラがとらえていた映像内容の記事です。
「事故が起きた交差点から、およそ200メートル手前で、事故を起こしたとみられる黒い車が、ハザードランプをつけて停車する様子がとらえ、およそ1分後、車が交差点の方向へ急発進し、直後に暴走事故が起きた」
と記述されています。
運転者は「ハザードランプをつけて停車した。」
この時、ハザードランプに手が伸びる前にチェンジを「N」か「P」しておけばどうでしょか?
≫チェンジを 「N」・「P」すれば
➡ アクセルを踏んでも車は発進しません。
この操作は、日頃から信号待ちや渋滞中に「N」・「P」することを癖付けておかなくては咄嗟の操作ではできないと思いますが、この事故を教訓として説明するのもいいのではないでしょうか?
3 発進時の指導
≫「前車が動き出してからチェンジを入れて、発進する。」ことを指導してください。
~ 停止距離を稼ぐのと、前車や前方の状況を把握しやすくするためです。
≫ 後ろの車が「クラクションを鳴らす。」とか「迷惑をかける。」等と反論が出るかもしれませんが、今までこの同動作で「クラクションを鳴らされた」ことはありません。これはドライバー同士の許容範囲であり、追突事故を起こす方が他人に迷惑をかけることになります。
~ 指導者の方が運転する際、検証を兼ねて実践していただければ分ると思います。
■ この1、2、3の一連の操作等を身体で覚えさせることができれば、下記写真の場面のような
右左折時や料金所通過時の追突防止に、また進路変更時の追突防止にも繋がります。
4 同乗指導方法
先にお話ししましたように、ドライバーの長年染みついた癖や動作は「言葉による指導」ではなかなか抜けきれません。同乗指導で頻繁に、≫停車時の車間距離、≫停車時の操作、≫余裕のある発進、≫通常走行時の車間距離等を体験させ体に覚え込ませてください。
また、同乗指導時には、意識づけのために、「反応時間」「威圧感を与えない車間距離」「適正車間距離」等を質問してください。
■指導する際の注意点
指導者は、
① 停車時の車間距離5mを講習を通じて体験で把握しておいてください。
また、車間距離10mの距離も体感しておくと指導しやすくなります。
② 右左折時の前車との車間距離についても応用で指導してください。
■通常走行時の車間距離指導
車間距離計を装着していないと難しいと思いますが、スマートホンのアプリを利用するのも一つの方法です。
右の損害保険ジャパン日本興亜㈱が提供しています「スマートホン用ドライブレコダー」は車間距離が表示されますので活用できると思います。
▼適正車間距離を体感させてください。
適正車間距離は、速度計の読みの数字から15を引いた距離を目安に指導してください。
➡ 時速30km-15=15m (停止距離、14m)
➡ 時速40km-15=25m(停止距離、22m)
➡ 時速50km-15=35m(停止距離、32m)
➡ 時速60km-15=45m(停止距離、44m)
5 ドライブレコーダ(DR)映像による車間距離指導
社有車にドライブレコーダを装着している場合は、基準画像を記録しておいて指導に活用してください。
■適正車間距離の基準画像の作成
車の場合、DLの装着位置がフロントガラス上部に設置し、ドライバーから見た目と変わります。また映像であるためどれぐらいの車間距離かわかりませんので、適正車間距離の「基準画像」を作成しておけば、大体の車間距離が分りますので指導に活用できます。
≫通常走行時の30~60km/hの各4段階の適正車間距離(下記、写真①参照)
~ 正確さはあまりありませんが、おおよその目安になります。
≫停車時の前車との車間距離(下記、写真②参照)
~ 停車、近接しているため、ほぼ正確に車間距離が分ります。
➡ 先の実技「相手に威圧感を与えない車間距離等」検証時、DR装着している車があればDR映像を画像にして記録しておくとよいでしょう。
① 通常走行時の基準適正車間距離映像資料の作成
▼前車との車間距離を測定して、60km/h(45m) 、 50km/h(35m)、 40km/h(25m) 、30km/h(15m)の映像を指導資料にする。(画像はクリックで拡大します。)
② 停車時の車間距離映像資料
▼参考に、下記の写真は当校講習車の画像で、停車、近接していますので、ほぼ正確に車間距離
が分ります。
▼この「基礎編、実技編、実践編」の講習と併用して指導すれば効果的です。
また、右左折、進路変更時、料金所通過時等の車間距離の指導に活用できます。
以上で追突防止の指導方法について説明を終わります。なお「基礎編」「実技編」「実践編」の内容についての質疑や他の指導方法について質問があれば「安全運転管理支援チーム」までご連絡ください。